METABOLOMICS

メタボロミクスとは?

「メタボ」という言葉はテレビや雑誌などでよく目にされると思いますが,「メタボロミクス」という言葉は初めて聞かれる方が多いのではないかと思います. 「メタボロミクス」とは,10年ほど前に新しい学問分野として提唱され,様々な分野において注目されている代謝物解析の技術のことです. 
○○ミクスという言葉は,ここ最近の分析技術の進歩に伴い計測可能なものすべてを対象として網羅的に解析ができるようになってきたことから生まれてきました. 対象とする全て,すなわち総体を表す言葉を「ome(オーム)」と言い,その総体の解析 (=オーム解析),すなわち網羅的な解析を意味する言葉として 「omics オミクス」が作られました.例えば,遺伝子(gene)の総体のことをgene + omeで「genome ゲノム」と言い, ゲノム解析のことをgenome + omicsで「genomics ゲノミクス」と言います.また,mRNA (転写物,transcript) の総体のことを transcript + omeで「transcriptome トランスクリプトーム」と言い,トランスクリプトーム解析のことをtranscript + omicsで「transcriptomics トランスクリプトミクス」と言います.タンパク質についても同様に,その総体を「proteome プロテオーム」,プロテオームの解析が 「proteomics プロテオミクス」になります.ここまでくれば,メタボロームやメタボロミクスの意味が容易に推測できると思います. 同様にメタボローム (metabolome) とは,代謝物 (meabolite) + omeであり,メタボロミクス (metabolomics) はmetabolome + omicsで,すなわちメタボローム解析になります.

メタボロミクスの特徴

メタボロミクスは,図1に示すような試料調製,機器分析,データ解析の行程で進められ,得られた結果をもとに再び試料を調製して何度か同じサイクルを繰り返して解析を行います.

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図1 メタボロミクスのスキーム

我々のグループでは,ガスクロマトグラフィー質量分析 (GC/MS),液体クロマトグラフィー質量分析 (LC/MS),超臨界流体クロマトグラフィー質量分析 (SFC/MS) などの質量分析を中心としたメタボローム解析システムを開発し,糖,アミノ酸,有機酸などの親水性成分からリン脂質,トリグリセロール, 胆汁酸などの脂溶性の成分までのあらゆる代謝物の網羅的な解析が可能な技術を有しています.
主要な代謝経路の構成化合物を対象とした代謝物の変動解析やその結果をもとにした特徴的な代謝物探索が各種の生物において積極的に進められていますが, 我々のグループでは,メタボロミクスの新しい運用方法についても検討しています.多数の代謝物の量比のバランスによって性質の違いを詳細に表現できることが メタボロミクスの最大の利点であるととらえ,代謝物 (化合物) のノンターゲット分析 (観測される成分すべてを対象とする分析法) に基づくマルチマーカープロファイリング (図2) の有用性に着目しました.見た目には現れない微細な生体内変動の解析,複雑な成分の組み合わせによって表される食品や生薬などの機能や品質の解析などにおいて, メタボロミクス (メタボローム解析) の技術に基づいたマルチマーカープロファイリングが有用であると考え,その適用技術の開発と応用研究に取り組んでいます.これまでに ,病気の診断や病態発症メカニズムの解析,医薬品の薬効・毒性評価のほか,植物,微生物,動物などの種々の生物における代謝解析,食品や生薬の品質評価など, 幅広い分野でメタボロミクスの有用性が示されています.メタボロミクスは,今後,医療,製薬,食品,環境など様々な分野での積極的な利用が期待されているキーテクノロジーです.

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図2 メタボローム解析に基づくマルチマーカー
プロファイリングのコンセプト