メタボロミクス

 1990年に始まったヒトゲノム計画により、2003年にはヒトのゲノムの全塩基配列が解読されました。その結果、ヒトの遺伝子数は約3万と推定され、人間の体はそれほど少ない遺伝子でどのように機能しているのかと、科学者たちは頭を悩ませることになりました。そして2003年以降、ゲノム研究から次の段階に進んだとして、ポストゲノム時代という言葉が使われ始めました。
 ゲノム情報は転写過程を経て、タンパク質に翻訳されます。そして、翻訳された酵素タンパク質により、生命に必要な代謝物が合成されます。代謝物の総体は「メタボローム」と呼ばれ、メタボロームを解析する技術・学問を「メタボロミクス」と呼びます。ゲノムが生物の設計図であるならば、代謝産物の総体を表すメタボロームは、いわばゲノム情報の実行結果です。生体内の複数の代謝産物の量比バランスのプロファイルは、ゲノム情報・環境情報を反映した高解像度で定量的な表現型といえます。現在、ポストゲノム時代を担う研究分野の一つとして、メタボロミクスは注目されています。メタボロミクスによってゲノム情報の実行結果を詳細に理解することにより、病気の診断や病態発症メカニズムの解析、医薬品の薬効・毒性評価、植物・微生物・動物など種々の生物における代謝解析、食品や生薬の品質評価など、 幅広い分野でのメタボロミクスの有用性が報告されています。メタボロミクスは、医療、製薬、食品、環境など様々な分野での積極的な利用が期待されている有望技術です。